「嫌な感じ?」
「母さんの勘って、昔から当たるんだ」
「ふぅん…」
レイヴンはクローディアの歩いて行った方向を見た。勿論もう既に姿は見えない。
「おっさん?」
「ん〜?おっさんもお腹空いてきちゃった。ベリウスと早く話せるなら、話して直ぐに此処から離れたいし」
「だな。騎士団がうろついてちゃ落ち着かねぇ」
「あはは、本来は居て安心して貰いたいだろうにね」
口に出してしまってから、レイヴンは何を言ってんだと自嘲する。そんな騎士はもう居ない。居ないのだ。
「まぁ、フレン辺りはそうか…」
「頑張って欲しいよね」
またもやレイヴンは後悔する。あの青年に何をさせたいのだか、と。
かつて目指した本当の騎士様を、自分の手で汚しておいて。騎士団はもう駄目だ。もう戻れない。もう。
「ギルド的にはどうなんだ?それ」
「ギルド的にも万々歳じゃない?治安が安定すれば、うちだって潤うよ」
「そりゃそうか」
「うち」なんて言葉がするりと出てしまって、ほんの少し狼狽する。
こんな話するんじゃなかった、そうレイヴンは思った。ユーリたちに会ってから、そしてもっと言うならクローディアに会ってから妙な心地だった。
ここ数年揺さぶられなかった感情を、かき乱されるようで居心地が悪い。此処からなどよりも、よっぽど彼らから離れたかった。
『なんか嫌な勘って滅茶苦茶当たるんだよな…』
かつての上司、恋人と言って良いのかは分からない男の声が聞こえた気がした。気がしただけだ。クロが言った通り、もう声なんか思い出せない。真っ先に失ったかと言われるとよく分からなかった。気付けば面影すらも忘れていたからだ。
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