木々がほんの少し色づき始めた季節、ある闇色の髪をした青年は肩を落としていた。
「イエガー、どの隊だった?」
落ち込んだ様子の青年に力強い声がかけられる。ゆっくりと彼は振り向いて、その声の人物を目で捕らえる。
「キャナリ…」
「酷い落ち込みようね。ええ、本当に酷いわ。で、どこの隊だったの?まぁ、聞かなくても分かるわ。大体3分の1くらいの新人騎士たちが落ち込んでいたから」
歯に衣着せぬ言い方をするのはいつものこと。しかしいつもは流せる言葉も今はそうはいかなかった。しっかりと彼女の言葉にダメージを受けて少し考えた様子だったが、重い口を開いた。
「……ルーベンス隊」
長い沈黙の後、搾り出すように言った。
「あら、奇遇ね、私もよ」
キャナリは腰に手を当てて堂々とそう言い放った。それを衝撃を受けた表情で彼は見る。彼女はなんでもない様子で「なに」と言った。その声に我に返り、彼は呆れたような顔で彼女の顔を見る。
「なんで君はそんなに……いや、なんでもない」
貴族の間ではかなり有名なその人、悪い噂は絶えない。その噂の半分以上は本当のことであるが、勿論面白おかしく語るための脚色が十分すぎるほど付け加えられていることも事実だ。
「確かに悪い噂絶えない人だけど、私、他人の評価は信じないの。さぁ、オリエンテーションが始まるわ。早く行きましょう」
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